東京地方裁判所 昭和56年(ワ)4733号 判決 1982年9月29日
主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は
(一) 別紙物件目録記載のメタルインサート及びインサート受金具を製造、販売してはならない。
(二) 被告の本店、倉庫、営業所に存する被告所有の前記(一)記載の各物件を廃棄せよ。
(三) 原告に対し、金一〇二〇万円及びこれに対する昭和五六年五月九日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行の宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
主文同旨
第二 当事者の主張
一 請求の原因
1 原告は、左記の特許権(以下、「本件特許権」といい、その特許発明を「本件発明」という。)を有している。
記
発明の名称 プレキヤスト鉄脇コンクリート板に埋込むインサートの取付方法
出願日 昭和四六年一二月一日
公告日 昭和五三年三月一〇日
登録日 昭和五三年一〇月一三日
特許番号 第九二七二三〇号
2 本件発明の特許出願の願書に添附した明細書(以下、「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「プレキヤスト鉄筋コンクリート板製作用の鋼製の型枠定盤にとりつけた棒状のインサート支持治具に円筒状のパイプを挿入し、そのパイプの中にインサートを上部から圧入して固定するインサートの取付方法。」
3(一) 本件発明の右特許請求の範囲の記載を分説すれば、次の構成となる。
(1) プレキヤスト鉄筋コンクリート板製作用の鋼製の型枠定盤
(2) 該型枠定盤にとりつけた棒状のインサート支持治具
(3) 該支持治具に円筒状のパイプを挿入する
(4) 円筒状パイプの中にインサートを上部から圧入する
(5) 前記型枠定盤に固定する
(6) インサートの取付け方法
(二) 本件発明の目的及び作用効果
本件発明は、屋内電気配線や照明器具を取付ける為のインサートを、予めプレキヤスト鉄筋コンクリート板(以下、「PC板」と略称する場合がある。)に埋込むための技術に係るものであり、従来工法においては、インサートをPC板中に決定的に正確な角度で理込むことができず、その埋込みが十分深く行われなかつたり、インサートの位置がコンクリートのかくはん中にずれたりして支障が生じたのであるが、本件発明はこれの防止を目的とするものであつて、前記構成をとつた結果、本件明細書の発明の詳細な説明の項記載のとおり、次のような作用効果を奏する。
(1) 「この方法によるとインサート4はコンクリート板5表面より深い位置に埋込むことが出来、それだけコンクリートかぶりが深く引張り強度が大きく得られる。」(別添特許公報(以下、「本件特許公報」という。)第2欄二三行ないし二六行)
(2) 「支持治具1は取外す必要のあるまで定盤2に取付けた儘反復使用が出来る。)(同二七行、二八行)
(3) 「この時パイプの内径は支持治具1及びインサート4の外周に密着するものを使用することによつてパイプの内面にコンクリートミルクが侵入することを防ぐ。」(同二九行ないし三二行)
(4) インサート4はコンクリート板5と一体となり、定盤2面の支持治具1から外れ簡単に脱型できる(同五行ないし二二行)
(5) 「コンクリートを攪拌するバイブレーシヨンの影響を受けても支持治具1とインサート4のつながりに支障のないように、更に出来るだけインサートの外周にコンクリートの接触面積が多いようにする」(同一〇ないし一四行)
(三) 本件発明は、インサートの取付方法に関する発明であるが、化学反応に関する発明のように方法の経時的順序が当然に必須の構成要素となる発明と異なり、以下(1)ないし(4)に述べる理由からも明らかなとおり、インサート、円筒状のパイプ(以下、「パイプ」と略称する場合がある。)棒状のインサート支持治具(以下、「支持治具」と略称する場合がある。)の取付け順序が経時的に厳格な過程を経なければその目的、作用効果を奏することができないというものではなく、取付け順序が前後しても前記の目的及び作用効果を奏することに何らのかわりはない。したがつて、本件発明の前記3(一)(3)の支持治具のパイプを挿入する工程と同(4)の右パイプの中にインサートを上部から圧入する工程の経時的順序は、本件発明にとつて重要な要素ではなく、右各工程の経時的順序が逆の場合であつても、構成としての同一性がある。
(1) 本件明細書の特許請求の範囲の記載から、パイプを支持治具に挿入することが先決条件で、その後においてパイプにインサートを圧入する以外の取付け順序はすべて構成要件外である、との文理解釈は当然には出てこないのであり、そのように読み取らなければならない必要性は全くない。
(2) 本件発明の特徴は、プレキヤストコンクリート工法において、「インサート4と支持治具1の外側からパイプ3で締付けてインサートを固定する方法」(本件特許公報第2欄三三行ないし三五行)にあり、支持治具、パイプ、インサートの組合せそのものから(二)記載の各作用効果が生ずるのであつて、右各部材相互間の取付け順序に発明としての本質的特徴があるのではない。
(3) 本件発明の特許出願過程において、出願人が「支持治具にパイプを先ず挿入する」方法のみを請求し、「パイプにインサートを圧入したものを支持治具に挿入する」方法を特に除外した経過も事実もない。
(4) 支持治具、パイプ、インサートを本件発明のように組合せたインサートの取付け方法に関する先行技術はない。
4 被告は、別紙物件目録記載のメタルインサート及びインサート受金具(以下、「被告製品」という。)を製造、販売している。
5 被告による被告製品の製造、販売は、以下の理由により特許法第一〇一条二号に該当し、本件特許権を侵害するものとみなされる。
(一) 被告製品のインサート受金具、スリーブ、インサート本体は、それぞれ本件発明を実施するために使用される部材である棒状のインサート支持治具、円筒状のパイプ、インサートにそれぞれ該当するものであり、メタルインサートは、インサート本体をスリーブに圧入装着したものにすぎない。
(二) 被告製品の取付け方法は、別紙物件目録記載のとおり、PC板製作用の鋼製の型枠定盤に取付けたインサート受金具にメタルインサートのスリーブ下部を挿入して、インサート本体を右型枠定盤に固定する方法であるが、これを経時的にみれば、まず、インサート本体をスリーブに圧入してメタルインサートを作り、次いで該メタルインサートのスリーブ下部を型枠定盤に取付けたインサート受金具に挿入するという工程からなる方法である。
そして、右被告製品の取付け方法と前記3(一)記載の本件発明の構成とを対比すると、被告製品の取付け方法と本件発明とでは、本件発明にいうパイプ及びインサート取付け順序が逆になつている点に差異があるように見える。しかし、本件発明の構成(3)、(4)の経時的順序に本件発明の特徴があるのではなく、(3)、(4)の順序が逆でも本件発明としての同一性があること前述のとおりであるから、被告製品の取付け方法は、本件発明の構成と同一である。
(三) 以上のとおり、被告製品の取付け方法は本件発明の構成要件を充足するから、被告製品は本件発明の実施にのみ使用する物に当たる。
6(一) 被告は、昭和五三年七月から昭和五五年末までの間に、少なくとも一億二〇〇万円の被告製品を製造、販売しており、その利益率は右売上高の一〇パーセントを下らないから、被告は、右により一〇二〇万円を下らない利益を得た。
(二) 原告は、本件特許権に基づき、被告製品と同種製品を製造、販売しているから、特許法第一〇二条一項により、被告の得た利益の額をもつて、原告が被告の右侵害行為によつて被つた損害の額と推定される。
(三) よつて、被告は原告に対し、不法行為に基づく損害賠償として一〇二〇万円を支払うべき義務がある。
7 以上により、原告は被告に対し、本件特許権に基づき、被告製品の製造、販売の差止め、被告製品の廃棄を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償として、損害金一〇二〇万円及びこれに対する不法行為その後である昭府五六年五月九日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求の原因に対する認否
1 請求の原因1、2の事実は認める。
2 同3(一)の事実は認める。(二)中、本件明細書の発明の詳細な説明の項に原告主張の(1)ないし(5)の記載のあることは認めるが、その余の事実は否認する。(三)は否認する。
3 同4の事実は認める。
4 同5の事実中(二)の事実は認めるが、その余の事実は否認する。
5 同6の事実は否認する。
三 被告の主張
被告製品は間接侵害を構成しない。
1 被告製品の取付け方法は、本件発明とはその構成及び作用効果を異にする。
(一) 構成の相違
(1) 本件発明と被告製品の取付け方法とでは、原告も自認しているうちに、パイプを支持治具に挿入する工程とパイプにインサートを圧入する工程の経時的順序が逆になつている。
(2) 原告は、右差異があつても被告製品の取付け方法は本件発明の構成要件を充足する旨主張している。
しかしながら、本件発明は方法の発明であつて、インサートの取付け方法の同一性が問題なのであり、本件発明を実施した場合と被告製品の取付け方法によつた場合とで、インサート(インサート本体)を型枠定盤に固定した際の形状が同一であつたとしても、各工程の経時的順序が異なる以上、インサートの取付け方法の同一性があるとはいえず、被告製品の取付け方法は本件発明の構成要件を充足しない。
(二) 作用効果の相違
本件発明によると、型枠定盤に取付けられた支持治具に、まず、パイプを挿入し、その上からインサートを圧入するわけで、PC板製造工場の作業員にとつては、パイプ挿入、インサート圧入という二段階の作業が必要であるうえ、圧入のための道具の携帯使用が不可避である。また、インサートはPC板に適宜間隔を保つて多数取付けられるので、作業員は、常にパイプ挿入、インサート圧入を繰り返すか、パイプの挿入が全部終つてからインサートの圧入にとりかかることになり、非常に作業能率が悪い。
これに対し、被告製品の取付け方法は、これを経時的にみても、スリーブヘのインサート本体の圧入、すなわちメタルインサートの作成は、被告において大量、迅速、簡易、確実になすことができ、かつ、PC板製造工場においては、作業員は、右メタルインサートをインサート受金具に挿入するだけでよく、右作業を迅速、容易、確実に行たうことができ、作業能率の著しい向上をもたらす。また、貯蔵、運搬時の管理がし易い、という効果もある。
(三) 以上によれば、被告製品の取付け方法は本件発明の構成要件を充足せず、作用効果も異なるから被告製品は間接侵害を構成しない。
2 被告製品は、本件発明の実施にのみ使用されるものではない。
(一) インサート受金具
インサート受金具は、PC板製作用の型枠定盤に螺合するために使用されるほか、現場施行のメタルフオームパネルに取付け、ナツトで締めつけて固定する方法や一般にセツトネジと称され、部品と機枠又は基礎、あるいは部品同志の位置決め等をして固定するための手段にも用いられる。
(二) メタルインサート
メタルインサートも受金具同様、メタルフオームパネル用として現場打設の際も使用されている。その実施例は、別紙実施例目録第1図ないし第6図記載のとおりである。
(三) 以上によれば、被告製品は本件発明の実施にのみ使用する物とはいえず、本件発明の間接侵害を構成する物ではない。
四 被告の主張2に対する原告の反論
1 インサート金受具について
インサート受金具は、本件発明の実施のためにのみ使用されるものであつて、これを他の一般のコンクリート工法(いわゆるR・C工法)に使用する必要は全くなく、部品として敢えて他に流用する経済性も実用性もない。
2 メタルインサートの実施例について
(一) 本件発明におけるインサート受金具は、型枠定盤にコンクート打設方向から直角にネジ止めして作業の能率を高め、施行を容易、迅速にするものであり(本件特許公報第1欄三五行ないし第2欄四行)、他方、別紙実施例目録の第1図ないし第3図の実施例は、型枠定盤の後方(反対側)から螺子止めするもので、右各実施例は、この意味で本件発明とは全く異なる例である。そして、右各実施例では実際の作業行程が多く、かつ困難で、理論上はともかく、経済的かつ現実的な実施例とはいえない。
(二) 別紙実施例目録の第4図ないし第6図の実施例は、木ネジないし釘により受金具を定盤に取付けたものであるが、これらの実施例も理論上のものであつて、現実にこの方法を用いて実施・営業をした事実は見聞したことはないし、経済性のない机上の発想である。
(三) また、右第3図ないし第6図の実施例では、受金具の鍔(フランジ)部が凹状にコンクリートに残存してしまうこととなり、現実性のないものである。右第2図の実施例に至つては、ボルトを定盤の反対側(後方ないし裏側)からインサートをネジ止めするのであるが、作業上も不可能な実施例である。
第三 証拠関係(省略)
理由
一 請求の原因1、2、4の事実は当事者間に争いがない。
二 成立に争いのない甲第二号証(本件特許公報、別添特許公報と同じ。)によると、本件明細書の発明の詳細な説明の項は、本件発明の目的とするところを述べる冒頭の部分(本件特許公報第1欄二〇行ないし三六行)と、これに続いて本件発明のインサートの取付け方法を説明する部分(同第1欄三七行ないし第2欄一四行)と、次いでインサートを取付けた型枠定盤を用いてプレハブコンクリート板を製作するに当つての効果を述べる部分(同第2欄一五行ないし第3欄三行)からなること、右本件発明のインサートの取付け方法を説明する部分は、「先づ第1図に示す棒状のインサート支持治具1をコンクリート板5を製作するに用いる鋼製の型枠定盤2に螺合して直角に取付ける。この支持治具1の本体の外径はインサート4の外径とほぼ等径のものとする。次にこの支持治具1に第2図に示す円筒状のパイプ3を外側に挿入する。このパイプ3の中に第3図に示すインサート4を上部より圧入するのであるが、圧入する部分の長さはインサート長さの1/3程度になるようにパイプ3の長さを設定する。」と記載されており、これによると、本件発明によるインサートの取付け方法は、先ず、型枠定盤に取付けた支持治具の外側にパイプを挿入し、次いで、このパイプの中にインサートを上部から圧入するという経時的順序に従つてなされることが明らかにされており、右順序を逆にしてインサートを取付ける方法は何ら説明されていないこと、また、明細書添付の図面も、右詳細な説明に示されているように、第1図aは、インサートを取付けるための支持治具を型枠定盤に螺合して取付けた状態を、第2図は、第1図の型枠定盤に取付けた支持治具にパイプを差込んだ状態を、第3図は、第2図のパイプ中にインサートを圧入した状態を示し、本件発明のインサートの取付け方法を経時的順序に従つて図示していることが認められる。
右認定の事実と前記当事者間に争いのない本件明細書の特許請求の範囲の記載を綜合考慮すれば、本件特許出願において、出願人が本件発明の構成に欠くことができない事項として特許請求の範囲に記載したところは、
(1) プレキヤスト鉄筋コンクリート板製作用の鋼製の型枠定盤に取付けた棒状のインサート支持治具に円筒状のパイプを挿入し、
(2) そのパイプの中にインサートを上部から圧入して固定する、
という工程を経時的に遂行することを内容とするプレキヤスト鉄筋コンクリート板に埋込むイサートの取付け方法であり、この方法の発明について本件特許権が成立したものと認められる。
もつとも、前掲甲第二号証によると、本件明細書の発明の詳細な説明の項には、「却ちこの発明はインサートの支持治具の外側からパイプで締付けてインサートを固定する方法を提供するものである。」の記載があり(本件特許公報第2欄三三行ないし三五行)、また、本件明細書の発明の詳細な説明の項に、請求の原因3(二)(1)ないし(5)のとおりの記載が存することは当事者間に争いがないが、右各記載は、その記載内容からして、本件発明を実施するために使用する部材である支持治具、パイプ、インサートの各形状及びその組合わせに由来する作用効果に関する記載であつて、本件発明の各工程の経時的順序に由来する作用効果に関する記載ではないことが明らかであり、これらの記載からすると、本件出願人は、支持治具の外側からパイプで締付けてインサートを型枠定盤に固定する内容の発明を本件明細書において開示する意図を有していたと認められなくはない。しかし、明細書において開示した発明のどの部分を特許請求の範囲に記載して特許権による保護を受けるべき発明とするかは、出願人の自由であつて、特許請求の範囲の記載によつて把握できる発明の範囲を超えた内容を発明の詳細な説明に開示したとしても、この超えた部分に特許権による保護を与えることは原則としてできないことは明らかである。
したがつて、支持治具にパイプを挿入する工程と右パイプの中にインサートを上部から圧入する工程の経時的順序が逆の場合であつても、発明の構成としての同一性がある旨の原告の主張は採用し得ない。
(三) 被告製品を表示するものであることについて当事者間に争いのない別紙物件目録の記載及び被告製品のメタルインサートであることについて当事者間に争いのない検甲第三号証の二によると、被告製品のメタルインサートは、インサート本体をスリーブに圧入装着したものであり、被告製品のインサート受金具及び右メタルインサートを構成するスリーブ、インサート本体はそれぞれ本件発明を実施するために使用する部材である棒状のインサート支持治具、円筒状のパイプ、インサートにそれぞれ該当するものと認められる。そして、被告製品の取付け方法が別紙物件目録の「取付方法説明」の項記載のとおりであることは、当事者間に争いがない。
四1 前記二で認定した本件発明の構成要件と右当事者間に争いのない被告製品の取付け方法とを対比してみるに、前者は、型枠定盤に取付けた支持治具に、まずパイプを挿入し、次いで右パイプ中にインサートを圧入してインサートを型枠定盤に固定するという方法であるのに対し、後者は、これを経時的にみると、まずインサート本体をスリーブに圧入装着してメタルインサートを作り、次いでメタルインサートのスリープの下部を型枠定盤に取付けたインサート受金具に挿入してインサート本体を型枠定盤に取付けたインサート受金具に挿入してインサート本体を型枠定盤に固定するという方法であつて、前者と後者とでは、支持治具(インサート受金具)にパイプ(スリーブ)を挿入する工程とパイプ(スリープ)中にインサート(インサート本体)を圧入する工程の経時的順序が逆になつていることが認められ、被告製品の取付け方法が本件発明の構成要件を充足しないことが明らかである。
2 次に、作用効果の点について両者を対比してみるに、被告製品の取付け方法による場合には、スリーブにインサート本体を圧入装着してメタルインサートを作る工程と型枠定盤に取付けたインサート受金具に右メタルインサートのスリーブ下部を挿入する工程を場所的、時間的制限を受けることなく分業化して、メタルインサートを予め作つておくことができるのに対し、本件発明を実施する場合には、右の分業化ができないと認められ、右事実からすれば、被告製品の取付け方法には、本件発明と各工程の経時的順序を異にすることにより、本件発明とは異なる作用効果が存するものと認められる。
3 以上の事実からすれば、被告製品の取付け方法は、本件発明とはその構成を異にし、かつその方法の経時的順序に由来する作用効果にも少なからぬ差異が存することが明らかであるので、被告製品の取付け方法は本件発明の技術的範囲に属するものとはいえない。
したがつて、被告製品は、本件発明の実施に使用するものとはいえず、間接侵害を構成しないことが明らかである。
五 よつて、被告製品が本件発明の間接侵害を構成することを前提とする原告の本訴請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用につき民事訴訟法第八九条の規定を適用して、主文のとおり判決する。
物件目録(省略)